(Pouch[ポーチ] / ソシオコーポレーション)
(Pouch[ポーチ] / ソシオコーポレーション)
「犬は人間にとって最良の友である」
よく耳にするこの言葉を、改めて噛みしめずにはいられない。そんなお話を16枚の写真とともに報じたのは、海外サイト「AcidCow」です。
写真に写っている犬の名は、スティーブ・メイソン。16歳でこの世を去った彼の死にまつわるエピソード、その全貌を本日はみなさまにご紹介したいと思います。
ハリーポッターのメガネをかけているかのような、目元のまあるい模様がキュートなメイソン。
ハスキー犬とラブラドールレトリバー、さらにはロットワイラーなどの混血種である彼のことを飼い主女性が愛犬として迎え入れたきっかけ。それはメイソンが幼い頃、遊びまわる他の子犬をよそに、立ち止まって花の香りを嗅ぐような子だったから。
飼い主さんが落ち込むとメイソンはいつも、耳をちょこんと立てるような仕草を見せ、寄り添っていてくれたのだそう。そんな姿を見ていると、自分の抱えている悩みなどたわいのないことだ、そんなふうに思えたんですって。
紙や棒きれを噛みちぎるのが大好きだったメイソン、そのため掃除にはいつも頭を悩まされていた飼い主さん。ダメになった掃除機も、ひとつやふたつではありません。
メイソンは飼い主さんの兄ともまた、大の仲良し。よき相棒として、共に旅行したことも数知れず。
メイソンに会った人は必ず、「忘れられない犬」だと口にしました。それくらい彼は、誰にとっても印象深い犬だったのかもしれません。
そんなメイソンも老いには逆らえず。ここ2年ほどの間に、視力・聴力の低下およびバランス感覚が悪くなるなど、老化の兆候が表れていたのだとか。
彼が命を終えるその瞬間は、眠るように、もしくは大好きなハイキング中にふいに迎える、そんなものであってほしい。そう飼い主さんは願っていたのだそう。
どんどん弱っていって、最終的に安楽死を選ばざるを得なくなる。それが最も嫌だったという飼い主さん。気がつけばメイソンは、彼女にとってかけがえのない存在になっていたのでした。
とはいえ、老いを止めることなどできません。メイソンは動きがゆっくりになり、遠くへ出かけることも難しい体に。ですがメイソン自身は、それを気にする様子も、さしてなかったのだそうです。
「今年の冬は可能な限り、メイソンに思い出を作ってあげるんだ」そう決意した飼い主さんは3月のある日、3匹の子犬、そしてメイソンを伴って、山へハイキングへと出かけました。
自宅からおよそ1.6km離れた地点で、飼い主さんは自分たちの後ろに、なにか気配を感じます。すぐにそれがオオカミだとわかりましたが、経験上、オオカミはシャイで人間がいると姿を隠すものであると知っていたし、なにより自分は犬を4匹も連れている。だからそれほど気にすることもなく、そのまま家へと帰ることにしたのだそう。
ところがその数分後、事態は急変します。振り返るとオオカミは、あと1.5mほどの距離に迫っており、その表情には空腹に耐えかねたある種の「覚悟」が宿っていました。20分ほど、襲いかかってきたオオカミと必死に対峙した一行。飼い主さんは持っていたスキーストックで、犬たちは噛みつくなどして抵抗したものの、オオカミもなかなか諦めようとしません。
ふと、オオカミが最も体の小さな犬に狙いを定めました。その瞬間、メイソンがそれをさえぎるように突進。彼の姿は今まで見たことがないほど大きく、たくましく感じられたと、飼い主さんは後に語っています。メイソンの勇気ある行動により、子犬は無事難を逃れました。ですが、その代わりに、メイソンは喉元に致命傷を与えられてしまったのです。
飼い主さんは悲鳴を押さえることができず激しく動揺、オオカミを殺してやろうとさえ思いましたが、時すでに遅し。こうしてメイソンは、オオカミに食べられることで、その一生を終えることとなりました。
オオカミに対して激しく憤った飼い主さんでしたが、今となってはもう、恨みはありません。なぜならオオカミは、生きるためにそうせざるを得なかったから。おそらく自身の死をも、覚悟して。
メイソンがいなくなった今、飼い主さんは「心に穴が開いてしまったようだ」と、その心情を吐露しています。あの時できることはなにもなかった、そうわかっていても、彼を助けることができなかったことを、今でも悔やんでいるそうです。
「メイソンはこれからも変わらず、愛犬であり、兄弟であり、親友よ。私のヒーロー、私の相棒、愛しているわ」
自らの命を投げ打ってまで、飼い主さんと子犬たちを助けたメイソン。彼は飼い主さんの心の中で、永遠に生き続けることでしょう。多くの人に心から愛されたメイソン、天国でも紙、噛みちぎっているのかなぁ。どうか、安らかに。
参考元:AcidCow
執筆=田端あんじ (c)Pouch